2016年05月21日

鎌倉幕府が出来るまでの黒歴史(35)-頼朝、鎌倉に入る-

西暦1180年(治承四年)9月4日、下総国千葉荘一帯(千葉県千葉市中央区一帯)を支配する千葉常胤は、安房国に亡命して勢力挽回を計画している源頼朝の側近・安達盛長の説得を受け、下総国府を襲撃。平家一族の目代(代官)と藤原親政を討ち、反平家の旗を掲げて挙兵しました。

これを受けた頼朝は、安房国の在地領主である安西氏、そして平家軍に攻められ所領を失った三浦氏と合流し、同年9月13日に300騎を率いて安房国を出発。17日、千葉常胤も300騎を率いて下総国府で頼朝と会見。以後は頼朝と行動を共にし、さらに武蔵国(東京都)へと兵を進めます。

頼朝軍が下総国から武蔵国に入ろうとするあたりで、上総国(千葉県南部)の有力武将・上総広常が手勢を率いてこれを待ち構えていました。その勢力およそ10,000から20,000騎。

頼朝は、千葉常胤に対して安達盛長を遣わしたのと同じように、上総広常に対しても三浦一族の和田義盛を使者として遣わし、助力を乞うていました。

それは頼朝が現在腰を落ち着けてる安房国は房総半島の先端で、ここから相模に討って出るには、上総国、下総国の東国武士を味方につける必要性がどうしてもありました。そのために欠かすことのできないキーパーソンが千葉常胤と上総広常だったのです。

和田義盛の説得を受けた上総広常は、1万から2万と言われる手勢を率いて頼朝に合流しました。この時、広常は「もし源氏の御曹司がヘタレだったら討ち滅ぼして平家への土産にしよう」と企んでいたそうですが、頼朝の威厳に圧倒され、今後の従順を誓ったと言われています。

「千葉氏、上総氏が源氏の御曹司を擁して相模の平家方を討つ」という報は瞬く間に関東全域に知れ渡り、続々と諸将が集結し始めます。以前大庭景親に味方して三浦氏の本拠である衣笠城を攻め、三浦義明を討ち死にさせた、武蔵国の有力武将・秩父一族の畠山重忠、河越重頼、江戸重長の三将も、10月2日、頼朝に臣従しました。

特に、秩父一族の惣領に位置する畠山重忠は、武蔵国隅田(隅田川あたり)で頼朝に面会しましたが、その際「白旗」を持参してきました。

この白旗は、秩父平氏二代目棟梁である平武綱(たいらのたけつな)が、前九年の役(西暦1051年から62年まで岩手県で起きた朝廷と安倍氏の大規模な武力闘争)後三年の役(西暦1083年から87年まで秋田県で起きた清原氏の内紛)の際に、当時の源氏の棟梁である源頼義・義家に助力し、先陣を命じられた際に賜った由緒正しきものでした。

頼朝はこの重忠の行動を讃え、今回の戦いにも、自分の六代前の源氏棟梁である源頼義が、重忠らの先祖である平武綱に命じたのと同じ「先陣」を重忠に命じ、さらに江戸重長には武蔵国の武士や役人の統括を命じ、武蔵国内に不必要な混乱を生じないように取りはからったと言われます。

この他、武蔵国からは豊島氏(豊島郡<東京都豊島区>の領主)足立氏(足立郡<東京都足立区>の領主)葛西氏(葛西御厨<東京都葛飾区>の領主)などが続々と集結し、3万を超える大軍に膨れ上がって、10月6日、頼朝軍は相模国(神奈川県)の鎌倉に入りました。

鎌倉は、頼朝の六代前の源氏棟梁・源頼義が前九年の役で勝利した際、八幡神の加護に感謝し、京都の岩清水八幡宮から相模国由比郷鶴岡に八幡神を分霊し、鶴岡若宮(現在の鶴岡八幡宮)として建立したという源氏ゆかりの地でした。

先の畠山重忠の白旗の故事といい、この鎌倉の謂れといい、頼朝には、この行軍こそが祖霊の導きとしか思えませんでした。

頼朝はこの地に本営を構え、憎っくき大庭景親とのリベンジに備えようとしておりましたが、10月13日、そこに驚きの一報が届きます。なんと福原京の平家本体からの追討軍が東海道を下り、駿河国(静岡県)に入ったというのです。敵の大将は平維盛(たいらのこれもり)。その勢力およそ5000騎。

鎌倉幕府の歴史書「吾妻鏡」は、この時の頼朝軍の勢力は200,000騎(二十万騎)と記してますが、朝廷の九条兼実の日記「玉葉」は40,000騎(四万騎)とあることから、吾妻鏡の数字は誇張もいいところ、おそらくこの時点の頼朝の勢力はおよそ4〜5万騎程度だったと思われます。それでも平家軍の5000騎に比べれば10倍程度の開きがあるわけで、流れは完全に源氏に向いていました。

10月16日、頼朝は諸将を引き連れ、平維盛軍を迎え撃つべく、鎌倉を出立します。
そして頼朝にはさらに強力な応援が加わることになるのです。

(つづく)
posted by さんたま at 16:34| Comment(0) | 鎌倉時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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