2015年07月21日

鎌倉幕府が出来るまでの黒歴史(5)-清盛、朝廷を完全に支配する-

西暦1189年(治承三年)11月14日、京を武力で制圧した平清盛は、翌15日には自ら後白河院に乗り込み、時の関白で、松殿家当主である松殿基房とその三男である中納言師家クビにすると、今度は自分の娘完子の婿で、本来の近衛家当主である近衛基通を「正三位」から「従二位」を飛び越えて「正二位」に昇進させ、加えて関白と内大臣を兼職させた上、藤氏長者(藤原一族の棟梁)に任命するという前代未聞の爆弾人事を行いました。

これは、今で言えば、さしずめ、当選一回の衆議院議員がさしたる政務実績もなく、強制的に内閣総理大臣の指名と総務大臣と政権与党の総裁を兼ねさせられたようなものです。

しかも清盛は、この人事を天皇の命令書(詔書)を以て実行しています。つまり、武力制圧を背景に軍事独裁的に行ったのではなく、あくまでも「高倉天皇の意思」としてその人事を公式に清盛が代行していることになります。天皇の意思が明確になっている以上、天皇の後見的立場である後白河院は何も口出しができませんでした。

法皇がこれまで平家を牽制して来たのは、院の力を増長する平家に分からせるためと、自身の行動に対し、清盛がどうでるかを見届けるためでした。よって清盛が何か手を打ってくるとすれば、自分に対して策を巡らすであろうと読んでいました。

しかし、清盛が打った手は法皇に対する策ではなく、院の権力の源泉である天皇を手中にした上での院への全面攻撃で、それは法皇の完全な想定外だったのです。

法皇は「おのれ清盛......またしても......」と悔しがりましたが、このような事態に要領よく対処できる院の近臣も少なく、ましてや、院としての権力の源である天皇を味方に引き入れている平家に対し、法皇が抗うすべはありませんでした。

法皇は、鹿ヶ谷山荘の主である静賢(信西の子)を使者として清盛に対し「今後は一切政務に介入しないから、許せ」と和議を申し入れましたが、清盛の返答は

「法皇様のことなど知った事か!」

と怒りのボルテージは収まらないどころか、ますます激しくなり、さらに強行策を実行していきます。
おもなものを挙げると

・太政大臣:藤原師長以下三十九名を一斉にクビ。その上、師長は京を追放され尾張国(愛知県)に配流。
・諸国の国司(領主)を大幅に入れ替え。平家の領地は日本のほぼ半分に拡大。
・松殿基房は大宰権帥に左遷の上、筑前国(福岡県)に配流。
・後白河院近臣・源資賢は京から追放。


もはや、清盛のやりたい放題という感じですね。

これらの処置をすべて天皇の御名で行った清盛ですが、ただひとり、天皇の御名で御せぬ人がおりました。

他ならぬ「後白河法皇」です。

清盛にとっての法皇は、平家がここまで勢力を持つことができた恩人ではあれど、近年の近衛家の所領裁断や嫡男重盛の領地を勝手に奪ったことに対する憎しみはありました。なれど、「治天の君」を殺すことが、世の中の平家に対する恨みに繋がることになることを知らぬ清盛ではありませんでした。

逆に清盛は、この状況を己の野望のために利用することを思いつきます。

同年11月20日、清盛は後白河法皇を鳥羽殿(京都鳥羽離宮)に移し、次男宗盛(重盛亡き後の平家の嫡男)に命じて周辺を警固させ、幽閉状態に追い込みました。

外からの往来も特定の人間以外は全面的に禁止して、政務に関わる一切のことが何もできなくなり、後白河院は事実上、院政停止に追い込まれたのです。

このクーデターによって、法皇はまたしても院の近臣の多くを失いました。
法皇にとっては、二度目の自身の勢力を削ぎ落される憂き目にあったわけです。

翌年西暦1180年(治承四年)2月、高倉天皇は、数え年わずか三歳の言仁親王に天皇の位を譲りました。これが安徳天皇です。高倉天皇は上皇となり「高倉院政」が開始されました。......と言っても、実際は平家による傀儡政権に等しい者でした。

これにより、清盛は名実共に後白河院の影響を排除することに成功し、平家の勢力は、朝廷を構成する院、天皇家、摂関家のすべてを操るほどになり、平家の全盛期を迎えることになるのです。

一方で、このクーデターによって、平家は新たな敵を多く作りました。後白河院法皇や院の近臣と距離が近かった寺社勢力(興福寺や園城寺)は勿論。領主が強制的に代わり平家の領土となった諸国では、在地の武士たちの不満が生まれ始めていました。それらが点となり、線となり、面と成って反平家勢力を築くのはもう少し後の話になります。

(つづく)
ラベル:京都 鎌倉 源平
posted by さんたま at 23:40| Comment(0) | 鎌倉時代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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